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3Dプリンターにはどのような種類があるのか。主要な5種類について特徴やメリット・デメリットをまとめました。
現在販売されている3Dプリンターには、主に5つの種類(積層方式/造形方式)があります。樹脂をはじめとする材料(素材)を使って積層していく方法は同じですが、造形方式(積層方式)によって特徴は異なります。それぞれの積層方式にメリットとデメリットが存在するので、よく特徴を知っておくことが大切です。
紫外線によって硬化する液体樹脂を用いる積層方式(造形方式)で、レーザーを照射しながら造形するのが光造形の特徴です。造形の精度が高く、微細な形状を再現できるため、複雑な形の造形物に対応します。時間がかかるのがデメリットで、機種本体も高額な傾向にありますが、日本でも普及しています。
液状の紫外線硬化樹脂をヘッドから噴射させたあと、紫外線を照射して一層一層硬化させて積み重ねていく方式です。紙の印刷におけるインクジェットプリンターの原理を応用しており、高精度で細かな造形が可能です。サポート材の取外しも簡単ですが、維持費が高額傾向なのがデメリットです。
粉末状の材料にレーザーを照射して焼結させていく方式です。銅やニッケル、チタンなどの金属やナイロンなどの粉末樹脂など、多くの材料が使えるのがメリット。他の造形方式とは異なり、造形後に高圧のエアを用いて残った粉末を除去しなければならず、手間がかかります。滑らかな表面の質感を求められる造形にはおすすめできません。
主に低価格の家庭用(パーソナル)3Dプリンターで使われている方式です。固形材料を熱で溶かしてソフトクリームのように積み重ねることで立体造形を行います。現在主流である樹脂を使用できるのでコスパが良く、コンパクトなサイズもモデルが多いため、狭いスペースでも設置できるメリットがあります。その一方で、精度や仕上がりが他の種類と比べて粗いという欠点があります。
接着剤と粉末を交互に吹き付けて積層する粉末固着方式。建築モデルやフィギュアをフルカラーでスピーディに造形できます。石膏粉末を材料とするため、1キロ500~1,000円程度で購入できるランニングコストの安さも魅力です。造形物が脆くて壊れやすいのがデメリットですが、硬化剤を使用し強度を上げることもできます。発色が求められる造形物の製作におすすめです。
アメリカの3Dプリンターメーカー・Desktop Metal社が独自に開発した特許技術による造形方式です。3Dプリンター本体はFDM方式をベースとし、「金属粉末とバインダを混合」「金型製作」といった工程をカットしたことで、複雑な形状の造形を実現しながらも、納期の短縮やコスト削減が期待できます。金属パーツの多品種少量生産に向いているだけでなく、設置のための特別な投資が必要ないコンパクトな設計で、オフィスでの設置にも適しています。
薄いシート上の素材を何枚も重ねていき、造形したい形にあわせて輪郭をカットしていくという、積層造形のなかでも典型的な方式の一つ。使用できる素材の種類が豊富で、PVC(ポリ塩化ビニル)・紙・プラスチックといった素材を造形する「積層製造方式」と、薄い金属のシートを超音波によって接合する「超音波結合方式」に分けられます。製作の幅が広く、大きめの造形物など精巧なプロトタイプの製作に適している造形方式といえます。
粉末やフィラメント状の金属をノズルから噴射し、レーザーや電子ビームなどで溶融し積層することで造形していく方式です。金属を素材として使用できるため耐久性の高い造形物ができることや、パウダーベッド方式の約10倍程度という造形速度の速さ、噴射する金属の切り換えによって異種金属を組み合わせられることなどが特徴。また、金属部品の摩耗箇所に対して肉盛り補修を行なう「レーザークラッディング」という技法による金型や部品などの補修への活用も期待されています。
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3Dプリンターには個人用と業務用マシンがあり、性能や出来上がる造形物の品質によってそれぞれ価格に違いがあります。個人用3Dプリンターは比較的安く手に入れることができますが、業務用よりは造形物の品質が落ちてしまいます。逆に業務用3Dプリンターは、個人用3Dプリンターよりも価格は高くなりますが、高品質で強度もある造形物の作成が可能です。そんな3Dプリンターの個人用と業務用の性能や特徴、気になる価格についてご紹介いたします。
個人用3Dプリンターのほとんどが熱溶解積層法(FDM)と呼ばれる方式で作られています。業務用のスペックの高い3Dプリンターに比べるとクオリティという点では劣ってしまい、印刷を失敗することもまれにあります。数万円から数十万円の価格で購入することができるので導入しやすいのですが、求める品質と実際の仕上がりに差があると使用が難しくなってしまうのが難点です。サンプルで品質の確認を行ってからの購入をおすすめいたします。
業務用の3Dプリンターはミドルクラスマシンとハイクラスマシンにわかれます。
価格は20万円から取り扱いがあり、個人用3Dプリンターに比べると積層方式を選べるのが嬉しいポイントです。ハイクラスマシンに比べると小さいサイズのマシンが多く、置き場所を選びません。様々なアイディアを短時間でまとめたり、試作段階で使用したりするのにオススメです。
価格は250万円~と高額です。ですが、ミドルクラスの3Dプリンターに比べると0.01mmと積層間隔が狭く、滑らかで強度の強い造形物が作れます。手のこんだ細かなデザインが必要なジュエリー業界や医療産業物作成の現場でも使用されています。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。