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3Dプリンターは、クリエイティブにかかわる人たちにとって、とても革新的な技術です。 商品デザインや開発の段階において3Dプリンターを活用している企業が増えています。フィギュアも例外ではありません。むしろフィギュア製造販売業の中では、3Dプリンターを導入することは画期的なことと言えます。実際に導入している事例は数多く存在しています。 そこで、フィギュア製造販売業での3Dプリンター活用事例や3Dプリンターの技術革新に関するニュースを紹介していきましょう。
3Dプリンターの技術革新の影響をダイレクトに受けるフィギュア製造業界。いままでは造形物の積層痕の処理や出力後の塗装が必要でしたが、近年、革新的な技術がどんどん登場しています。
フィギュア製造販売業で、3Dプリンターを導入することで、どんなメリットが生まれるのでしょうか。
造形を手作りで行うと、コストと時間がかかります。ものによっては、年に数体しか作れないものもあります。しかし、3Dプリンターを取り入れることで、短時間で作ることが可能です。しかも、3Dプリンターに細かい数値を設定すれば、細かいところまでこだわりが行き届いた造形物が完成します。短時間で作りたいものが作れるのは魅力的です。特に、フィギュアを作るためには膨大な時間がかかるので、最適と言えるでしょう。
手作りの作業をする人でも、一度プロトタイプとしてイメージに近い物を作ることで、本格的な作業に入る前のイメージトレーニングにもなります。完成した後で、失敗作と捨ててしまうということが少なくなるので、結果的に時間短縮にもつながります。 このように、導入するメリットはありますがこれだけではありません。ここからは、実際導入したことで、どんなメリットが生まれたのか。どのように仕事が改善されたのか。という点に注目をしながら、フィギュア製作者向けの3Dプリンターニュースや3Dプリンターの導入事例を紹介していきましょう。是非参考にしてください。
3Dプリンターによるフィギュア製作は非常に幅広い分野に対応しており、今回は国民食と言っても過言ではない「カップヌードル」のプラモデルが、3Dプリンターによって製作されました。これは、カップヌードルの販売元である日清食品が、1年以上かけて製作しました。2020年9月18日から販売が開始されており、海外展開も予定されています。
本物の麺を3Dスキャンすることで製作されたため、麺の複雑な形状が正確に再現されているのが大きな特徴です。カップヌードル特有の「疎密麺塊構造」もしっかり再現されており、カップヌードル好きが満足すること間違いなしでしょう。もちろん麺の他、たまごやエビ、「謎肉」についても個々に設計されています。初心者であっても組み立てやすい構造となっているので、ぜひ購入してみてください。
ペットの飼い主であれば誰もが持つであろう「大切な家族の姿をいつまでも残しておきたい」という願望を叶えるべく生み出されたのが、文化堂印刷による新商品「Onlyワン ふぃぎゅあ」です。この商品は、3D専門オペレーターが、ペットの写真を基にフィギュアを製作するサービスとなっています。国内では20台ほどしか存在しないフルカラー3Dプリンターによってデータを出力していくため、いくつもの魅力を備えています。中でも大きいのが、色鮮やかでペットの特徴を細部まで表現できる点です。手元に写真さえあれば制作可能なため、撮影費用が必要ないのも大きなメリットとなるでしょう。
大手メーカーから小さなフィギュアなど、着色された状態で出力される3Dプリンターが登場。いままでの3Dプリンターは、出力後にひとつひとつ手で塗装しなければいけませんでした。それが、今回の3Dプリンターが登場したことで不要になるかもしれないのです。
このようなフルカラーの3Dプリンターを導入することで、どのような改善が見られたのでしょうか。
従来のフィギュアのカラーリングは、完成間近でイメージしていたものと全く違う色合いになってしまうことが多々ありました。最終品と異なるため開発段階で路線変更をしなければならなくなってしまったり、場合によってはモデルの色合いを再検討することもありました。しかし、3Dプリンターを導入することで、その問題を解消する期待が出来ます。機械なので100%再現することは難しいと言えますが、従来の製造過程よりも短縮してカラーリングの工程を進めることができます。
フィギュア製造をする上で作られるプロトタイプは、こだわればこだわるほど、コストがどうしてもかかってしまいます。例えば、カラーバリエーションを今までは6、7種類しか作っていなかったところ、10種類以上を作ることが可能になります。色のプロトタイプが広がれば、フィギュアのカラーバリエーションも広がるため、デザインにも新しいものが生まれます。特に、建物を作るにあたっては、今までコストがかかってきたものも簡単に作る事ができるのです。
フィギュアを製造する上で大切なのは、プロトタイプの制作です。大量生産が求められる大手メーカーでは、プロトタイプをこのような3Dプリンターで作れるのであれば、コストがかからず高品質なものを作り出す事ができます。もちろん、プロトタイプなので商品にはなりませんが、質感を含め本物に近いものを作ることが可能なので、手軽に製造出来るという点では、大幅なコストダウンに成功したと言えます。しかし、積層ピッチは0.1~0.3mm。そのため、色が合わさる部分は少しぼやけて見えます。出来栄えとしては及第点と言えますが、まだ、プロのフィギュア造形師のような仕上がりとはいかないようです。3Dプリンターは、まだまだ発展途上のテクノロジーなので、このようなデメリットがあるということも知っておく必要があります。
早稲田大学の研究グループが、3Dプリンティング造形物の表面をなめらかにする「3次元科学溶解仕上げ機構」を開発したことを発表。あわせて、表面がなめらかになると造形物の光の反射が増加することに着目して、造形物を画像化し、明度によって仕上げの進行具合を評価する方法が考案されました。
今回、同大学研究グループが開発した手法を使えば、いままで行っていた積層痕の研磨や痕を消すための塗装などの手間がいらなくなります。
VRに対応している3Dスキャナ「ポンタスキャナデスクトップ」が登場。高精度3Dスキャンでフィギュアを読み込むことで、データを最適化し、VRにエクスポートすることができます。出力ファイルの形式はOBJとSTLをサポート。スキャン可能な大きさはh30×W20cm程度と制限はあるが、スキャナ本体・ターンテーブル・三脚・キャリブレーションテーブルのセットが4万5,000円(税不明)と考えると十分にお得と言えるでしょう。
VRと3Dプリンターの事例はこれだけではありません。中央大学理工学部の情報工学科では、3DプリンターとVR技術を活用したものづくりに注目をしている。「仮想世界と現実を行き来することで、新しい仕組みやシステムを開発できないか?」と模索をしているのが、3次元工房である。ここでは、VR内で作ったものを、実際に3Dプリンターで具現化するというもので、大手家電量販店が取り入れている。この技術が確かなものになれば、VR空間を利用してクリエイティブなことが可能なので、よりリアルなフィギュアを作ることが可能です。例えば、そのシチュエーションに合う設定をVRで作り出し、リアルなポージングをするフィギュアを作るといった形です。近い将来、この技術が取り入れられるかもしれません。
北海道にあるフィギュア製造会社での活用事例です。親会社の設計コンサルタント会社の3Dデザインノウハウを生かして、ペットのフィギュア作製をオーダーメイドで行っています。このサービスでは、大好きな愛犬の写真1枚あれば、作ってもらうことが可能です。その写真のペットを製造するだけではなく、この子のこういうポーズで作ってほしいという要望があれば、そのように忠実に再現させることが可能なのです。写真では見えない部分も表現してくれるので、愛犬をフィギュアにしたいという人にとっては、たまらないサービスです。起業に導入したフルカラー3Dプリンターは、フィギュア作製だけでなく、土木・建設関連の立体造形物出力サービスにも活用。人々の心を癒すべくオーダーメイドペットフィギュアの販売に力を入れています。
3DフィギュアとITを融合した、まち・ひと・おみせをつなぐサービスの提供を開始しました。3Dプリンターで作成された店員のフィギュアには、スマートフォンに情報を送信する「iBeacom」を内蔵。そこから、お店の来店者のスマートフォンへクーポン情報と店舗周辺の街に関する情報配信サービスの提供を開始しています。来店者はiphoneを持ってフィギュアに近づくだけでOK。情報を受け取った方が店頭でのショッピングだけでなく、周辺で楽しい時間を過ごしてもらうことで、街そのものを好きになっていただけます。
技術室のマネージャーは、「世界観をどのように表現するかが試作段階にかかっている」と語ります。ドールハウスや着せ替え人形の開発では、特にデザインや製品の精度が要求されるのです。商品化される前に納得がいくまで、実際の動きや遊び感、視覚的な要素やフィギュアを置いた時の色合いやバランスなどを何度も検証。そのため、実物を見ないとわからない部分が多くあったのです。
高精度フルカラー3Dプリンターを導入してから、試作段階でキャラクターや建物といったモデルを一度に複数種類を出力することができるようになりました。納得がいくまで色の再現やデザインを確認することができるので、高品質で素早い製品開発につなげられます。
実は、釣り業界にも、フィギュアと通じるものがあります。それが、ルアーです。ルアーは、魚が餌と思い込ませるように、形、動き、匂いで勘違いさせるものです。本物の魚とそっくりに作らなくてはいけません。これは、フィギュア製造に近い技術が求められます。ルアーを作る過程で、何度も試作品を作り、それを水槽に入れて泳がせることで問題なければ、製品化するという気の遠くなるような作業が求められます。そのため、1つのルアーを作るまでに膨大な時間がかかってしまうことがあります。
しかし、3Dプリンターを導入することで、試作品を製造する時間が大幅に短縮することが可能になりました。水槽に入れて泳がせる試作品までを、3Dプリンターに任せて、その後削る作業をすれば良いので、今までよりも効率の良いルアーを作ることが可能です。
3Dフィギュアの弱点と言えば、精巧なものを作るプリンターになればなるほど高額なものになってしまうという点です。発展途上の技術のため、安くて高品質なものが作れる3Dプリンターを買うということは、先の話でしょう。
しかし、渋谷に画期的なサービスを提供してくれるお店が登場しました。
それが、doob-3d 渋谷店です。ここでは、その場で撮影したものを、スキャンして3Dプリンターでフィギュアにするというサービスです。家族の記念写真ならぬ、記念フィギュアも可能なのです。それだけではありません。人だけでなく、物や動物食べ物までも製造可能です。3Dプリンターに手を出せなかったクリエイターの人でも、プロトタイプの制作として作ることも可能です。10cmサイズのフィギュアであれば、1万円前後で作る事ができるので、機械を買えない人が試しにやってみるのも良いでしょう。もちろん、ここ最近は個人向けの3D プリンターも登場しているので、そっちを購入しても良いですが、買った後に納得いくものを作れないと落胆してしまうケースもあるので、このようなサービスで代用するのも良いでしょう。
また、3Dプリンターを自由に使える場所は、ここだけではありません。渋谷のFabcCafeでは、レーザーカッターや3Dプリンター、3Dスキャナーを自由に使えるカフェも登場しているので、フリーランスのクリエイターの人はこのようなサービスを積極的に使うのも良いです。ただし、人気のお店なので、お早めの予約が必要です。
以上のように、フィギュアの製造現場では次々と新しい導入方法/サービスが提供されています。ますます3Dプリンターを取り入れた造形物や、3Dプリンターだからこそ出来るフィギュアが登場していくので、これからも、注目をしていきたいですよね。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。