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ハイテク機器として注目されている3Dプリンター。クリエイティブな分野に従事する人や企業にとっては重要な存在になりつつあります。しかし、まだまだ登場してから日が浅く、よく理解していない人も少なくありません。そこで、このページでは”そもそも3Dプリンターとは何か。”に注目し、わかりやすく解説していきます。
3Dプリンターとは用紙にインクを用いて平面的な印刷をする一般的なプリンターとは違い、立体物をあらわすデータをもとに、一層一層、樹脂などの特殊な材料を少しずつ積み重ねていくことで立体造形物を実現していく装置です。まさに立体物を印刷するプリンターであり、プリンターによって性能は異なるものの、基本的には3Dなデータさえあれば自由に造形物を出力することができます。もう少し掘り下げて詳しく説明していきましょう。
3Dプリンターでは、ゴムの素材から強度のある金属素材まで様々なものを作ることができます。幅広い分野の造形物を作ることが可能です。限定された素材だけではないので、夢は膨らみますよね。
3Dプリンターの特徴は、必要なモノを必要な分だけで作れる点です。
この機械が1台あれば、その場で作りたいモノを作ることができます。車を作ると仮定しましょう。車は、様々な部品が必要です。小さい部品もたくさんあります。作る車によっては、部品を取り寄せて作らなければならない、といったこともあります。
そんな時工場で部品を作れたらどうでしょうか。作る時間の手間が省けるのではないでしょうか。
また、3Dのデータを入れ替えるだけで、さまざまな部品が作れるので入荷待ちで作業が出来ない、という心配はありません。必要な分だけ、様々な種類のものが作れるといったものが3Dプリンターの特徴と言えるでしょう。
3Dプリンター1台あれば、様々な部品を作ることができます。
これは、言い換えると、在庫を抱えなくてもその場で作れば良いということになります。
航空会社では、何かあった時のために、様々な部品を管理しています。そのため、必要以上に空港内で巨大な倉庫を借りているのです。3Dプリンターがあれば、部品を現地で作れば良いので、在庫を抱えなくてもよくなります。在庫を抱えることで、管理するコストもかかりますが、削減することができます。
機械を修理に出した時、こんなことを言われたことはないでしょうか。「修理に必要なパーツが、修理工場になくて入荷待ちです。」そのため、予定よりも修理期間が伸びてしまい、イライラしてしまった。という経験。
これは、機械を修理に出した人ならあるあるだと思いますが、3Dプリンターがあればこのような問題がある程度解決されます。入荷待ちで作業が滞ってしまう問題が解消されます。
3Dプリンターには、さまざまな造形方式(積層方式)があります。
液体樹脂が入った容器にレーザーを照射。レーザーによって樹脂部分が硬化することで立体造形が可能となる方式です。古くから採用されているやり方で、3Dプリンターの基礎的な方式と言えるでしょう。
先ほど登場した方式です。作りたいと思った造形物のSTLデータを作成します。その作成されたデータをもとにスライスされた層を1枚ずつ重ねていき立体モデルを製作するやり方。3Dプリンターの中でもベーシックなやり方として知られています。
粉末にした材料に、高出力のレーザー光を照射。そこから形成される方式です。強度はあるも造形物を作れます。しかし、表面がざらつくという欠点もあります。
インクジェットプリンターの原理を用いて発展させた方式。インクジェットのノズルから微細粒子を噴射して造形するやり方。3Dプリンターの新たな方式として近年登場した方式。
このように、一言で3Dプリンターと言っても様々なやり方が登場しています。どのやり方がおすすめかということは、作りたい造形物によって変わります。3Dプリンターで何を作りたいのかをイメージしてから、どの方式を採用したプリンターを導入するかを検討するのが良いでしょう。
3Dプリンターは現在さまざまな分野で活用されています。
3Dデータさえあればその通りの形を造形できることができるので、誰でも自分の考えたデザインを手軽に出力して実現化、可視化することができるのです。
では、どのような歴史を歩み今のような発展をしてきたのでしょうか。簡単に3Dプリンターの歴史を紐解いていきましょう。
ここまでの流れを見て、気づいた人もいますが3Dプリンターは、日本がスタートなのです。
しかし、コストがかかる、未知なものから3Dプリンター技術はアメリカに追い越されてしまいました。これだけでは3Dプリンターは一部の業界でしか注目されない機械のままだったでしょう。
ですが2013年大きく事態は急変します。そのきっかけが、バラク・オバマ大統領の一般教書演説です。この時、3Dプリンターの可能性について言及しました。そして、3Dプリンターの積極的な技術開発に取り組むと宣言しました。
ここから、アメリカの3Dプリンターメーカーは、飛躍的に技術開発が進みます。そして、2013年3Dプリンターを展示したキーエンスのブースが注目されます。1万人近い人がカタログを求め、多数のメディアに紹介されました。しかし、これだけではまだまだ話題になるのには到底及びません。
注目を浴びた3Dプリンターがではなぜ今話題になっているのかと言うと、それは、積層方式の一つである熱溶解積層方式が特許の期限切れで低価格化したことが理由の一つに挙げられます。今まで数百万のものはとても手が出なかった方でも、低価格化された3Dプリンターなら手に入れやすいという環境になってきました。
それでは、中小企業や個人が手に入れやすくなった3Dプリンターの例を紹介しましょう。
当初は、340万円だったプリンターも、130万円台に中小企業でも手が出せるようになりました。それだけでなく、50万円、20万円と個人のクリエイターでも手が出せなくはない価格まで下がっています。
これらは、100万円未満で買うことができる3Dプリンターです。コンパクトなモデルばかりですが、100万円未満で購入できるのが大きな特徴。予算が100万円未満だと材料押出堆積法/FDMがほとんどですが、Formlabs Form3は光造形方式(FLA)へ対応しています。
ここまでで取り上げたのは、ほんの一部です。このように、事業用3Dプリンターでも今なら100万円未満の予算で購入することができるようになり、ますます3Dプリンターが身近になってきています。しかし、3Dプリンターを誰でも買える時代になった今、気をつけないといけないことがあります。一体どのようなことに気をつけなければいけないのでしょうか。
様々な素材から造形物を作れるプリンターですが、どの機種でもすべての素材を使えるわけではなく、機種によって対応できるもの、できないものがあります。どんな素材を使えるかを買う前に必ずチェックしましょう。
3Dプリンターは、機種によって出力される造形物のサイズが異なります。同じ大きさの機械でも微妙に異なるので、必ず造形物はどのぐらいのサイズが作れるのかをチェックしておきましょう。
3Dプリンターは、コンパクトなものでもそれなりにスペースが必要です。また、水平の場所に設置しないと、造形物に微妙な誤差が生じる可能性があります。3Dプリンターを取り入れる際は、十分なスペースを必ず確保するように心がけましょう。
家庭用3Dプリンターと業務用3Dプリンターの違いについては、明確にどれが家庭用でどれが業務用といった切り分けはないようですが、考えうる相違点は大きく以下の3点にあるといえます。
家庭用の3Dプリンターは一般的な家庭でも設置できるコンパクトサイズになっており、価格についても1万円台から高いもので20万円以上まであります。
業務用の3Dプリンターは小型のものもありますが、大きいもので大人よりも大きく明らかに家庭では使えないサイズのものがあります。それらは当然価格も高く、50万円〜1000万円以上と個人が購入するには難しいでしょう。
家庭用の3Dプリンターに採用されている造形方式は、「熱溶解積層型(FDM)」を採用したものが主流となっており、一部「光造形型(SLA)」の製品もあるようです。
「熱溶解積層型(FDM)」は様々な造形方式のなかでも比較的安価ですが、一方で出力された造形物に積層痕といわれる段差が出てしまうなど、クオリティ面で業務用に劣っています。
業務用の3Dプリンターは「光造形型(SLA)」のものが多く、積層痕が目立たないというメリットがあります。
一概にはいえませんが、材料の層を積み重ねて造形物を作成する3Dプリンターには「積層ピッチ」という厚みがあり、家庭用が0.1mm〜であるのに対し、業務用は0.01mm〜といわれており、薄ければ薄いほどなめらかな造形物を作ることができることから、業務用の方がクオリティが高いといえるでしょう。
3Dプリンターで使用できる素材は当然ながら造形方式に関係しており、家庭用であればABS樹脂やPLA樹脂など数種類に限られますが、業務用は金属やゴムライク樹脂、Ultem、カーボンなど、様々な素材に対応する機種が揃っています。
そのため、より幅広い用途に適応できるのは業務用3Dプリンターということになります。
3Dプリンターの基礎的な分野を中心に、まとめて紹介してきました。これで、3Dプリンターは、一体どんなもので、どんなことができるのか分かったのではないでしょうか。
さらに技術面で以前より進化しているのも魅力です。造形中の様子をスマートフォンで監視することができたり、Wi-Fiでリモート制御できたりするモデルの登場や、射出ヘッドを2つ持つことで2色同時に使用できたりするタイプも出てきました。3Dプリンターは、当たり前の機械に変化していきます。3Dプリンターへの注目度は、これからますます高まっていくことでしょう。
是非今回の知識を役立ててみてはいかがでしょうか。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。