公開日:|更新日:
CONTENT
生産・製造段階
用途別3Dプリンター3選を
詳しく見る
この記事でわかること
- 生産・製造フェーズにおける業務用3Dプリンター活用(オーダーメイド・医療・航空部品等)のメリット
- 治具内製化や工具製造による大幅な納期短縮・コスト削減を実現した企業事例
- 生産現場で求められる推奨造形方式(熱溶解積層・インクジェット・粉末固着)と今後の課題
業務用3Dプリンターを導入すると、生産・製造段階でどのようなことが可能になるのか、まとめています。
生産・製造段階で業務用3Dプリンターができること
業務用3Dプリンターを導入すれば、オーダーメイドの一点ものであれば、簡単に製造できます。小型であればあるほど付加価値が高くなり、コスト面の心配も少なくなるでしょう。
たとえば補聴器の場合、これまでは完成までに1週間かかっていたものが、3Dプリンターの導入により短時間で完成させられます。また、耳型をスキャンするため、それぞれの耳の形に合った補聴器を作り出せます。
歯科の分野でも3Dプリンターが活躍します。詰め物や被せ物を3Dプリンターを使うことで、簡単に、素早く作り出せます。
また、航空部品も3Dプリンターにより生み出せるようになり、ジェットエンジン部品の量産にも成功しています。
無重力の環境下でも3Dプリンターを利用できます。宇宙空間でソケットレンチの製造が可能となり、今後ますます生産・製造段階で3Dプリンターが取り入れられるでしょう。
このように、3Dプリンターはユーザーの要求に合わせた迅速な設計を可能にしてくれるマシンなのです。動作や組み付けの確認を行えるだけではなく、さまざまな分野で必要とされるツールです。
ただし、3Dプリンターでは物によっては1cmの造形に約1時間かかります。小型の造形物ならば迅速につくり出せますが、大型の物になると時間もコストも割かなければなりません。さらに、3Dプリンターの機種によっては、積み重ねる層の厚みが大きいため、表面がザラついてしまうこともあります。
これまでは質の高さが従来の製造方法には及ばなかったので、製造過程を3Dプリンターだけに頼るのは現実的とは言えませんでしたが、現在はかなり良くなってきています。しかし、対応サイズやコスト、納期などを考えると、3Dプリンターはまだ一般的な量産品に適しているとはいえません。
量産品としての質の高さを求めるのであれば、1日に数百~数千個つくり出せる射出成形型や、細かい箇所まで設計通りに作れる切削加工の方が適しています。現状は成果物に見合った技術を選ぶということになりますが、将来的には量産品も作れるようになることが期待されています。
業務用3Dプリンター導入済企業の例
アルテック株式会社
業務用3Dプリンター導入前は、治具の作成を外注していたアルテック。しかし、3Dプリンターを採用したことで、納期の短縮に成功しています。
さらに、金属用の設計図が不要になり、コストが10%ダウン。今後は3Dプリンター用の設計図を利用して、さらに20%以上のコスト削減を目指しているそうです。
部品を減らすだけで、かなりの費用削減が期待できます。単価100円で6万個もある部品がなくなれば、それだけで600万円の削減に成功するでしょう。工程数も1工程減らすだけで、約100万円を削減できるケースがあります。
治具のつくり直しのシーンでは、治具1点で約1万円かかる場合もあるでしょう。生産数1日100個、単価1万円であれば、1日の機会損失額は100万円です。試作品調達でも1点5万円かかることがあります。
海外で治具のつくり直しが発生した場合、出張者を現地に残して作業しなければいけません。とある企業では、35個分のつくり直し費用の他に、機会損失や出張延長、宿泊費用を合わせて900万円(10日間)の損失額が発生した事例もあります。
逆に、3Dプリンターを導入して利益が発生するケースもあります。
精度が高い造形モデルならば、何ページもある説明資料をしのぐ強力なプレゼンツールとして活躍します。250個の製品を3社から受注できると、単価1万円であれば750万円の売上につながるでしょう。
このように3Dプリンターを用いれば、作業品質および生産効率の改善が見込めます。また、新たな視点で生産プロセス全体の見直しが可能となり、在庫管理の手間やコストの負担が削減されるでしょう。
ファクトリー・イノベーション株式会社
製造業界向け精密切削工具などを製造している世界的なメーカーGuhring Limitedの子会社として1973年に設立されたGuhringUKは、BMW、ジャガー、ランドローバー、エアバスなど世界の大企業向けに特注オーダーメイドの精密切削工具やフライス工具を製造しています。
同社では、Markforged 3Dプリンターの導入によって、5軸切削や従来の工法から解放されたエンジニアが他の部品も製造できるようになり、部品製造におけるコスト削減率75%、時間削減率66%、稼働率60%を実現、会社の収益アップにもつながりました。
Guhring UKが製造する工具の各部品は最初に設計が顧客によって承認される必要がありますが、社内で設計、テスト、製造するのに最大8週間かかることもあり、設計が承認されるまでは作業開始すらできません。そのため小ロット生産の小規模メーカーにとってコストやリードタイムが問題となっていました。
この問題を解決するために積層造形を検討し、MarkforgedのコンポジットプリンターとMetal Xシステムの導入を決定。炭素繊維3Dプリンターを使用することで1日で試作品を作成し、問題点を設計に反映させて5日で機能する工具を製造しました。現在では中小企業への製品もより早く、低価格で提供できるようになっています。
生産・製造時点で求められる3Dプリンターのスペックは?
3Dプリンターならば、高精度で複雑な形状の物や、着色済のモデルを作れます。ただし、造形の方法によっては、横からの圧力に弱い、製造コストが従来よりも必要、といったデメリットがあります。
それらを踏まえて、生産・製造段階での使用に向いていると言える造形方式は、熱溶解積層方式、インクジェット方式、粉末接着方式の3つ。
それぞれの大まかな特徴としては、熱溶解積層方式はジェットエンジンの燃料ノズルや支柱の製造にも用いられており、インクジェット方式は機種によっては複数の素材を組み合わせて造形できます。また、粉末固着方式は、接着剤を着色することで、フルカラーの造形物を制作できます。
それぞれに求める造形物に最適な3Dプリンターを選び、自社の成長へとつなげましょう。
よくある質問
Q1
生産段階で3Dプリンターを使うなら、どの部品から始めるべきですか?
A
変更が多く少量で作る治具や補助具、供給待ちが長い部品から検討しやすいでしょう。例えば位置決め治具なら寸法が変わるたびにデータを修正できます。販売する最終部品へ進む前に、使用頻度と不具合時の影響を基準に候補を選びます。最終製品の部品へ広げる場合は、材料・寸法のばらつきと検査の条件が重要です。
まず代表部品の使用量と要求品質を整理し、従来工法と完成費用を比較します。
Q2
治具を内製するとき、削減効果をどのように確認しますか?
A
外注費だけでなく、発注から現場投入までの時間、設計変更の回数、作業者の使いやすさを測ります。例えば持ち替え回数が減れば一工程の時間が短くなり、ワークの当て面を変えれば傷による不良も減らせる可能性があります。改善したい指標を治具ごとに決めます。造形後の仕上げや交換費用も含め、同じ治具で比較してください。
軽量化やワークの傷防止が目的なら、作業時間と不良件数も記録すると効果を説明しやすくなります。
Q3
大量生産では、なぜ射出成形が有利になる場合がありますか?
A
金型費用を多数の製品へ分散できると、1個当たりの成形時間と費用を下げやすいためです。数が増えるほど、3Dプリントでは造形時間と後処理が積み上がります。損益分岐点は部品の形状と変更頻度で変わるため、予定数量を複数置いて計算します。ただし、形状が複雑で変更が多い少量品は3Dプリントが有利な場合もあります。
数量ごとに金型費、材料、後処理、検査を含む総費用を試算して使い分けます。
Q4
生産用の造形方式は、強度だけで選べますか?
A
強度に加え、寸法のばらつき、仕上がり、必要数量、後処理、材料供給、品質記録を確認します。初回品だけを比べず、別の日に同じ条件で作った部品の寸法と仕上がりも比べます。生産では再現性が採用判断に直結します。樹脂の粉末床方式、材料押出方式、金属造形など候補は用途で変わります。代表部品を複数回作り、完成品の品質と処理量を測って選定してください。