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積層造形法の一つ、BMD方式について紹介。メリットやデメリットを調べました。
BMD(Bound Metal Deposition)方式とは、MIM(Metal Injection Molding)といわれる技術を応用した、Desktop Metal社が独自に開発した造形方式です。
従来の金属3Dプリンターは金属粉の粉塵対策などが必要なため、専用の部屋で作業するなど取り扱いが難しいとされてきましたが、BMD方式の場合、MIM工法における「金属粉末とバインダの混合」「金型製作」といった工程が不要となっています。
BMD方式を採用しているDesktop Metal社の「Studio System2」の3Dプリンター本体は、溶かしたABS樹脂やPLA樹脂をノズルから出力して積載していくFDM方式をベースとしており、比較的安価でありながら、従来の工法ではできなかった複雑な形状の造形を実現しています。
BMD方式は複数の工程カットに成功したDesktop Metal社の特許技術であり、納期の短縮やコスト削減が期待できます。
また、金属粉の粉塵対策や不活性化ガス使用における設備投資・専用スペースの確保も必要なく、より設置しやすいといったメリットも挙げられます。
焼結の工程でガスを用いるため、継続利用におけるランニングコストがかかる他、有機溶剤使用に伴い、オフィス内に局所排気装置を設置することも事前に考慮する必要があります。
BMD方式はDesktop Metal社独自の技術となっており、この工法を採用しているのは同社のStudio Systemシリーズのみとなっています。
FDM方式をベースとした3Dプリンタ本体、脱脂処理に使用する専用溶剤を自動充填できるデバインダーステーション、焼却温度や時間を専用ソフトウェアが最適化するファーネスという、金属造形に至る過程を自動化する3つのシステムによって構成されています。
同じくBMD方式を採用していますが、材料の改良によってデバインドと焼結工程を統合することで、3Dプリンターとファーネスのみという2ステップ処理での金属造形を可能にした新機種です。
付属のFabricateソフトウェアによって全工程を自動化。操作が簡単で且つ冶金学者や機械工のような専門知識は不要となっています。
BMD方式を採用したStudio Systemシリーズは、金属パーツの多品種少量生産に向いているだけでなく、設置のための特別な投資が必要ないことから、トータルコストに優れているといえます。
また2ステップ処理を実現したStudio System2はよりコンパクトな設計のため、オフィスでの設置にも適しており、設置場所の確保に悩んでいる方にもおすすめの3Dプリンターといえるでしょう。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。