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さまざまな業界で導入されている3Dプリンター。どのような事例があるのか、また今後の展望について紹介します。
現在3Dプリンターはさまざまな業界で活用されています。ここ数年で3Dプリンターの高性能化や低価格化が進んだことで、2020年には3Dプリンター市場規模は世界で210億ドルにもなると予測されているほどです。扱える材料も従来の樹脂だけでなくコンクリートや食品なども可能になってきています。
IT専門調査会社である「IDC Japan」が出した予測によれば、国内3Dプリンタ市場は2021年以降に著しい成長を遂げる可能性が高いとしています。その理由が2020年に世界中で大流行した新型コロナウイルスです。経済がストップするなどの緊急事態に対して、コスト削減や納期短縮が可能となる3Dプリンターの需要は大きく高まりました。部品製造などの事例も多数見られるようになり、新たなビジネス誕生の可能性も示唆しています。同社では、2019~2024年の国内3Dプリンター市場支出額の年平均成長率(CAGR)は6.8%と予測しており、今後益々注目される業界となっていくでしょう。
ここでは、3Dプリンターが導入されている業界別に、どのように使われているのか事例を紹介します。また、今後の展望についても調べてみたので、合わせてご覧ください。
※参照元:MONOist公式サイト(https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2006/04/news041.html)
3Dプリンターの中心は依然として製造業がメインです。ものづくりの現場である製造業では生産過程において3Dプリンターを活用することができ、導入によって開発期間やコストなどを削減することができます。今後さらに材料の選択や高性能化によって、製造業の流れが大きく変わることが予想されます。
また、最近では金型そのものを3Dプリンターで製作する事例も出てきました。このメリットとして、コストの大幅カットと時間短縮が挙げられます。こうした魅力もあってか、工場に使用される治具にも3Dプリンターが用いられる事例が増加傾向です。
食品業界で注目されているのが「3Dフードプリンター」。実際に食べられる食品を作成できます。3Dフードプリンターは専用のペーストを材料にして3Dプリントするため、味はもちろん栄養だってコントロール可能。3Dプリンターが高級料理に負けないメニューをつくりだす日もそう遠くありません。
さらに3Dフードプリンターが普及することで、人間には成し得ないメニューの製作やレストランでの人件費削減、食品工場における作業の簡素化なども期待できるとのことです。
ファッション業界においても、3Dプリンターの活用は広まっています。たとえばパリのファッションウィークでは、「Giddy Up(ギディーアップ)」が衣服のパーツやシューズやアクセサリーを3Dプリンターで作成。
3Dプリンターを使えばオートクチュールのような衣服を製作することができるほか、縫い目のない衣服や複雑な造形のシューズなども作成可能です。また、3Dプリンターを用いてサンプル製作をすることで、製作時の廃棄物を削減できるでしょう。
現在ではまだ製作した衣服の柔軟性などに問題が残っているものの。3Dプリンターによる衣服の製作はさまざまな可能性を秘めています。
製造業(メーカー)での3Dプリンターの事例についてもっと詳しく
患者一人一人に合わせたオーダーメイドの模型や義手、人工骨など、医療の現場において3Dプリンターの活用が始まっています。内臓を具現化することで説明を分かりやすくしたり、時間がかかっていたオーダーメイドに時間をかけずに高品質で作ることができたりと、3Dプリンターの導入は医療分野において優れた効率を発揮できます。
最近では、注目の医療とされる「再生医療」においても、3Dプリンターの技術が導入されるようになりました。医療に用いる「シリコン製物体」と呼ばれる器具はこれまで1年間に1つ作るのがやっとでしたが、3Dプリンター導入によって9ヶ月で5台の製造が可能になり、研究のスムーズ化に貢献しています。
模型や建造物の製作にも3Dプリンターが活躍します。現在は模型や見本、プレゼンへの活用がメインですが、今後技術開発が進むことで建築資材の製作や家自体の製作など、3Dプリンターの可能性が期待されています。
今後建築業界で3Dプリンターが益々活躍していきそうな兆候として、都市開発の一貫である橋建造に際し、3Dプリンターの使用がプロジェクトに組み込まれているのです。日本でも、宮内庁のプロジェクトに3Dプリンターが用いられるなど、着実に存在感を高めています。
3Dプリンターの導入により、学生が学びやすい環境や3Dプリンター自体を学ぶワークショップが増えています。教科書で学ぶよりも立体造形を目で見たり触ったりするほうが覚えやすく、子ども達がデザインやものづくりをする好奇心をかきたてることができます。
たとえば、地学については紙などで説明をしてもなかなか理解がしづらいのがこれまでの実情でした。しかし、3Dプリンターによってリアルな地形を再現可能になったことで、生徒たちが的確な理解をしやすくなっています。
いままでは自動車の開発や設計、制作で用いられてきた3Dプリンター。近年、欧米企業では、自動車の構成部品も3Dプリンターで制作されるようになりました。米国では、構成部品の75%を3Dプリンターで制作する会社も。転換期を迎えている自動車業界の3Dプリンター事情から目が離せません。
大量生産の際には3Dプリンターよりも従来の方法が適していますが、大型かつ複雑な構造の部品製造が求められる場合に、3Dプリンターが活躍します。日本での導入にはさまざまな課題が依然として残っていますが、それでも徐々に3Dプリンターが浸透しつつあるのは確かです。
既にかなりのハイクオリティフィギュアが作れるようになっている3Dプリンター。ワンフェスでもネギを振り回すことで有名なキャラクターのフィギュアやスタイリッシュな造形のチェス、ドクロの意匠を施した指輪や複雑な造形のメカが展示されています。
最近では、3Dプリンターによって写真からフィギュアを製作するサービスが開始されるなど、より幅広い活躍が見られています。日々クオリティーが進歩しているのは確実なため、今後も3Dプリンターの活躍に注目したい業界です。
フィギュア製造販売業での3Dプリンターの事例についてもっと詳しく
技術の進歩により、3Dプリンターは極めて厳しい基準が求められる宇宙・航空機業においても活躍をし出しています。実際に航空機のエンジン製造に3Dプリンターが使われ始めており、今後益々の活躍が期待できるでしょう。また、宇宙事業においても、人工衛星の一部パーツ製造に3Dプリンターが用いられており、注目です。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。