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現在の3Dプリンターの世界シェアおよび世界シェアが高い注目のメーカーについて調べています。
アメリカでベストセラーとなった本の中で「第二次産業革命における起爆剤」として紹介された3Dプリンター。
2012〜13年に相次いで特許が失効したことなどに端を発し、この10年あまりで市場は急拡大の様相を呈しています。
従来の3Dプリンターは主に試作機として活用されていましたが、現在は量産部品を製造できる3Dプリンターが多数開発されたことで、その適用範囲が大きく広がりをみせています。
軽量化のニーズが高い航空機や自動車産業はもちろん、アディダス社が3Dプリントの技術を用いてランニングシューズを開発した他、建築工法への導入も進んでおり、オランダではメタル3Dプリント橋が実用化されたり、スペイン・バルセロナで建設中のサグラダ・ファミリアの工期が150年近く縮まったというニュースも記憶に新しいところです。
3Dプリンター市場の拡大に伴い、当然ながらメーカーによる開発競争は激化。現状、大手メーカーである「Stratasys(ストラタシス)」や「3D Systems(3Dシステムズ)」が世界シェアの多くを占めてはいますが、ドイツの「EOS」が金属プリンターでシェアを獲得している他、近年では「Markforged(マークフォージド)」「Carbon(カーボン)」「Desktop Metal(デスクトップメタル)」といった小〜中型の3Dプリンターを展開するスタートアップ企業の成長も著しく、市場で大きな存在感を見せており、シェア争いは数ヶ月で変動する可能性もあります。
ここでは、世界的にシェアが高く、且つ日本に代理店をもつメーカーを4社紹介しています。
シェアが高い=良いとは一概にはいえませんが、実績の面で信頼できる3Dプリンターメーカーといえるでしょう。
Stratasys(ストラタシス)は、アメリカのミネソタ州とイスラエルの2拠点に本社をもつ産業用3Dプリンターメーカーです。
1988年にFDM方式(熱溶解積層方式)という技術の特許を取得。それによって世界初の3Dプリンターが開発されました。
現在でも世界中で大きなシェアを維持しており、まさに業界大手といえます。
主に手がけているのは業務用の中・大型機で、価格帯も100万〜5,000万円以上とニーズに応じた様々なラインナップを揃えています。
Markforged(マークフォージド)は、2013年に設立したアメリカのボストンに本社を構える3Dプリンターメーカーです。
同社の手がけるカーボンファイバー3Dプリンターは、芯材にカーボンを入れることができる技術を用いており、「世界で最も革新的な3Dプリンター」ともいわれています。
カーボン3Dプリンターは業務用だけでなく低価格の卓上型も用意。もちろん金属3Dプリンターの製造も手がけるなど幅広いニーズに対応しています。
3D Systemsは、アメリカのサウスカロライナ州に本拠を構えており、1980年代から3Dプリンターの製造を手がける老舗企業といえます。
現在使われている3Dプリンター用ファイルフォーマット「stl(Standard Triangulated Language)」形式は、3D Systemsの創業者チャック・ハル氏が発明したことはあまりにも有名です。
取り扱っている3Dプリンターは研究開発向けの小型機から業務用の大型機など幅広く、価格帯は100万〜3,000万円ほどとなっています。
EOS(Electro Optical Systems)は、ドイツの3Dプリンターメーカーです。業界において30年以上の歴史を誇り、中でも金属3Dプリンターの世界シェアが大きく、「金属3Dプリンターの巨人」とも呼ばれています。
取り扱うのは主に大型機で、価格帯は3,000万円以上となっています。
なお、日本での販売は25年以上に渡ってNTTデータエンジニアリングシステムズ(NDES)が代理店を勤めてきましたが、2017年に日本法人を設立。より踏み込んだ教育とコンサルティングを行なうなど、現在はNDES社の支援という形をとっています。
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矢野経済研究所が発表した調査結果によると、2020年の3Dプリンター世界市場規模はメーカー出荷数量ベースで36.4万台。前年の2019年は36.5台でしたから、前年比99.7%と成長が伸び悩んだ結果です。
2020年において3Dプリンターの出荷台数が減少傾向にあった原因は、新型コロナウイルスの流行によるものが大きいのではないかといわれています。そもそも3Dプリンターは、性能の高さや利便性から市場規模拡大が見込まれていました。しかし新型コロナウイルスの流行によって各企業の業績が伸び悩み、高額な3Dプリンターの購入には至らなかったのではないかと考えられています。
3Dプリンターの世界市場規模は、2023年頃までは緩やかな成長が予測されています。矢野経済研究所が示すデータによると、2021年は36.6万台、2022年は36.9万台、2023年は37万台の予測。
ただ、2023年までは緩やかな成長予測であるものの、3Dプリンターの将来的な市場規模は拡大すると考えられています。出荷台数が伸び悩んだコロナ禍においても3Dプリンターの利便性は各業界で評価されており、とくに量産可能な3Dプリンターの需要は高まっています。
複雑な構造や小さなデザインの製造を得意とする金属3Dプリンター。グローバルインフォメーションの調査結果によると、金属3Dプリンターの世界市場規模は2019年に約7億7000万米ドルでした。2020年~2027年の間には32.5%を超える成長率が予測されています。
金型を使わずに複雑形状の造形が可能な樹脂3Dプリンター。日本能率協会総合研究所が提供するMDB Digital Searchが示すデータによると、樹脂3Dプリンターの市場規模は2026年に1,430億円に達する予測です。2020年は680億円であったことから、6年間で2倍以上の成長が期待できる見込みです。
アメリカのGE社は、航空機ボーイング747-8に搭載されるエンジンブラケットを3Dプリンターで製作しました。3Dプリンターを使った製作によって材料の廃棄ロスを約90%削減。さらに部品重量を10%軽減することにも成功しています。3Dプリンター製エンジンブラケットはFAA(連邦航空局)の承認を得て、2019年1月から出荷されています。
イタリアの電気自動車メーカーX Electrical Vehicle(XEV)は、2018年に中国の3Dプリント材料メーカーPolymakerと共同で低速電気自動車(LSEV)を製作・発表しました。低速電気自動車(LSEV)は3Dプリンターを使ってつくられており、大量生産が可能。
2019年からは中国江蘇省の巨大工場で3Dプリント電気自動車の量産を開始しています。
スポーツ用品メーカーAdidasは、ドイツ国内で「ALPHAEDGE 4D」2018年11月17日より販売開始しました。ALPHAEDGE 4D はCarbon社の3Dプリンティング技術によってつくられたミッドソール「adidas 4D」を搭載しています。
また、車メーカーBMWでは25年以上に渡って3Dプリンターを活用。2018年には3Dプリンター製の部品を20万個以上製造しており、製造数は前年の1.42倍も増加しています。
オランダの3Dプリント建設企業MX3Dは、2018年にステンレス鋼構造のメタル3Dプリント橋の完成を発表しました。完成した3Dプリント橋は、オランダ・アムステルダムにある運河のひとつであるアウデザイツ・アフテルバーフワルに設置されています。
航空宇宙や自動車、金型、医療、宝飾などさまざまな業種・分野で導入されている3Dプリンター。3Dプリンターのメーカーでは海外が主流ですが、日本国内においても参入するメーカーが増えています。
たとえば工作機械メーカーのソディックやDMG森精機、オークマ、電機メーカーではキヤノンや東芝機械、富士通アイソテックなど。さまざまなメーカーが3Dプリンター事業に取り組んでいます。
また、参入には自社の既存技術を応用する・他社との共同開発や買収を行う・海外の3Dプリンターメーカーの代理店事業などからノウハウを蓄積して参入するなどの方法があります。
「Stratasys」「3D Systems」のような大手が世界シェアの多くを占めていますが、2014年当時に比べると両社の時価総額は10分の1ほどに下がっており、後発の企業にそのシェアを脅かされつつあります。
さらに金属3Dプリンターメーカーは「低コスト・高速生産」を活かして着実に成長を遂げています。
特にオフィスなどでの使用を想定したデスクトップ型といわれる3Dプリンターは需要を伸ばしており、今後更なる市場およびシェアの拡大が期待されています。