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近年、製造業においてはさまざまな種類の製品を少量ずつ作る「多品種小ロット化」が求められています。その理由としては、顧客ニーズの多様化によって製品のライフサイクルが短くなっている、という点が挙げられます。このような状況に対応するため、多品種小ロット化が求められている、というわけです。
この多品種小ロット化生産を行うにあたっては、さまざまな資材や原料を少しずつ仕入れる必要があるためコストが高くなりやすい、生産効率が悪いなどの課題があります。このような背景から、3Dプリンターを活用して治具製作を行うケースが増えてきています。
製造現場において、新しい治具を使用する場合には試運転と評価を行います。例えば試運転の段階で改善すべき点が見つかった場合でも、3Dデータを修正することによってすぐに治具を再度製作できます。また、もし日本で設計を行い海外で製造するといった場合でも、治具の設計データを送信するのみで現場で製作が行えるといった点も製作期間の短縮につながる理由といえるでしょう。
例えば治具の軽量化を行ったり、持ちやすい形状のアイディアをすぐに形にできるなど、「付加価値」を持つ治具の製作ができるといった点も3Dプリンターを使用するメリットです。軽い治具の製作ができれば作業者の負担が軽減できることから、ミスなどの防止にもつながるといった面もあります。
3Dプリンターで治具を作成する場合、下記のような流れとなります(下記は流れの一例です)。
3Dプリンターで治具を製作する場合、製作して試運転を行った際に不具合が見つかった場合でも、3Dの図面を修正して製品をすぐに製作することが可能となります。このような面から、3Dプリンターで治具を作成すると、完了するまでの時間を短縮できるといった面があります。
以前は簡単な治具の製作においても金型を使用していたことなどから、設計や変更には1ヶ月ほどかかっていたケースにおいて、3Dプリンターを導入することによって治具の製作期間が1週間へと短縮できた、という事例があります。このように、治具の製作期間を短縮できるため、そのほかの製造や組み立ての工程についてもスピードアップが可能であると考えられます。
3Dプリンターで治具を製作する際にかかる時間は、「最短で1日」となります。従来行われてきた機械加工による治具製作より大幅に時間の短縮が可能である点が、3Dプリンターを使用する大きなメリットといえます。
現在、3Dプリンターを使用して造形物を製作する際には主に樹脂が用いられていますが、金属材料などほかの素材を用いて造形が可能な3Dプリンターもあります。例えば造形物に強度が欲しいといった要望がある場合など、それぞれの目的によって使い分けを行うと良いでしょう。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。