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ドイツのEOS社が開発した3Dプリンター「EOS M 290」と「EOS M400-4」について、モデルの特徴やスペック、商品の導入例などをご紹介します。
EOS M 290は、ドイツのEOS社が開発した、粉末の金属をレーザーで1層ずつ溶融し固めて造形する金属3Dプリンター。高い精度・解像度に加え、表面品質にも優れていて、高密度・機械特性が高いのが特長です。
EOS M 290には400Wのファイバーレーザーが搭載されており、フォーカス径を小さくすることで高い再現性が得られ、複雑な部品の造形が可能。フォーカス径を調整することによって生産性をアップさせるだけでなく、プロセス制御の幅を高められます。
EOS M 290は、金属素材を使って3Dデータのみでダイレクトに製品を造形することが可能です。さまざまな金属に対応しており、試作品のみならず部品の金型や最終製品の製作まで可能。効率アップやコストダウンを実現します。
ほかにもEOS M 290には「EOSTATE」というソフトウェアがあり、データ管理や内臓カメラによる監視、レーザー出力の監視などによって造形の品質を管理します。この品質管理機能を活用することで、より高品質な製品を造形することができます。
射出成型や鋳造、鍛造などでの量産を想定した製品作りの場合、従来の手法では初期投資や巨大な設備投資はもちろん、プロトタイプと完成品の材料の違いによる修正や形状の変化に対応するために多額のコストがかかります。商品開発を進めるためには、本来であればどんどん試作品を作って、本当に製品化できるかどうか確認していく必要があります。
しかしプロトタイプを作るだけでも大きなコストがかかってしまうので、商品の品質やスペックが合格であっても投資額を回収できるかという点が問題になり、これが商品開発を遅らせる要因になっていました。
しかし、EOS M290はプロトタイプを作れるのはもちろん最終製品としての製造用途としても使えるので、商品開発にかかるコストを大幅に削減することに成功しています。
プロトタイプで使用する材料と、最終品で使用する材料と同等の材料特性を実現することができるという特性を活かすことで、新しいプロトタイプの制作もコストを気にせず作り出せるのは大きなメリットにもなっています。
また、コストを抑えられるということは、量産製品だけではなく多品種の少量生産製品の需要にも対応できます。少量生産品を扱う場合、コストに対して量産製品よりもシビアにならなくてはいけないため、先進的な開発がなかなかできない現状があります。
しかし、莫大な費用をかけることなく試作品を作れる、必要であれば最終製品まで一貫して製作できるEOS M290を活用すれば、投資回収の問題もクリアになるというのも特徴と言えるでしょう。
EOS M 290は、軽合金や超合金、鋼鉄類、複合材にいたるまで、さまざまな材料を融解して造形を行なうことができるシステム。250×250×325mmと造形サイズも広いため、多種多様な製品を造形できます。
試作品や最終製品、金型まで、複雑なデザインも3Dデータからダイレクトに造形することが可能なため、複雑な形状の自動車部品や冷却水管などさまざまな用途に対応でき、歯科や医療向けにも応用が可能です。
高い精度で複雑な製品も造形できる「EOS M 290」を取り入れている日本の企業は多くあります。シンフォニアテクノロジー株式会社の航空宇宙部門では、ロケットや航空機の部品製造に向けてEOS M 290を導入し、試験的に運用を行なっています。そのほかにも、原田車両設計株式会社では、幅広い分野でEOS M 290の3Dプリンターを使用した試作品や量産品を製作。介護医療機器をはじめ、航空設備機器や車載組み込み開発にも取り組んでおり、EOS の3Dプリンターがさまざまな分野で活躍しています。
8つの主要事業をナブテスコ デジタル・エンジニアリングセンターでは、データをデジタル化し、さらに3次元化するためにEOS M290を導入。
ものづくりの3D化は、開発期間を短縮させると同時に、グループ会社が開発したAMシステムを積極的に活用するようになるため、企業全体のバックアップにつながっています。
ものづくりの革新によって、ナブテスコの技術面を強化するとともに、持続的な成長をサポートしています。
オリックス・レンテックでは、需要が高まっている3Dプリンタの造形受託サービスを始めるためにEOS M290を導入。
顧客のデータを基に、試作品や試験片などをEOS M290で具体的に造形するという斬新な事業で、従来の取引先である航空・宇宙関連や自動車だけでなく、エレクトロニクス、機械、建設、研究機関など新しい分野の取引先獲得に成功しています。
また、造形受託サービスで培ったEOS M290の技術的なノウハウなどを基に、自社で金属プリンタを導入したいと希望する顧客への導入支援サービスも行うことで、ソリューションカンパニーとしてのブランド力アップにも役立てています。
製品開発によって発生するデータ管理、維持に対するコスト、サーバー構築にかかるコスト、セキュリティなどの悩みを解決してくれるのがクラウドサービスのManufacturing-Spaceです。
サーバーの導入費用からランニングコストまで大幅に削減、外出先でもCADデータを閲覧可能にしたマルチビューアー、NTTデータグループのデータセンターを利用して保管場所を確保することでセキュリティ・ウイルス・BCP対策もOK、営業情報・設計・生産情報などのデータを一元管理など、さまざまな悩みにマルチに対応します。
レーザーを使用した粉末積層造形法による粉末積層造形システムや自動化で最高の研磨品質を実現するDryLyteテクノロジーを使ったDLyteで、試作から量産まで対応できるサービスを提供しています。
CAEシステムと高度な技術により、機械部品などの小さい製品から大型構造物まで多様な分野へのトータルソリューションサービスを提供。
自動車・航空機・船舶・圧力容器・産業機械の受託解析など技術支援サービスを行います。
造船生産設計サービスでは船殻・管艤装・鉄艤装の生産設計を、鐵構生産設計サービスでは橋梁・鉄骨など鋼構造物の原寸処理サービスを行っています。
会社名 | 株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ |
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所在地 | (東京本社)東京都大田区西蒲田7-37-10 |
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
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アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。