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3Dプリントを行うためには、まず3Dデータを作成する必要があります。
流れとしては「3Dデータを作成」→「STLファイルへの出力・整合性チェック」→「造形パスツールへの変換」→「3Dプリント」→「サポート材の除去」→「仕上げ」となりますが、もっとも手間がかかる工程が3Dデータの作成でしょう。
そこで、3Dデータ作成における表現方法やファイル形式などの解説のほか、STL(OBJ)データで起こりやすいエラーやデータ作成時の注意点などについて紹介します。
中身や面がなく、各頂点を線で結んだ表現をワイヤーフレームとよびます。骨組みだけの状態のため、データ量が少なく表示速度が速いのが特徴。3Dデータ作成においてワイヤーフレームのみを使用することはほとんどありませんが、形状作成の過程では広く用いられています。
サーフェイス(サーフェス)とは、骨組み状態のワイヤーフレームに面をはり付けたもの。立体モデルですが、中身がないため体積をもちません。そのため、表面部分を確認したい時などに用いられます。
骨組みと面をもったサーフェイス(サーフェス)に中身(体積)が加わった表現です。体積や質量の計算や干渉チェックが可能。情報が多くデータ量も多いものの、ほとんどの3D CADで用いられています。
ポリゴンとは三角形や四角形が集まった多面体のこと。3D CGで使用されることが多く、球などの表現も可能。表現可能な範囲が広いものの、追加設計の際に穴がないようにしたり、裏表を混在させないなどの注意点もあります。
3D CADなどで作成されたデータは、各ソフトによって保存されるファイル形式が異なります。しかし作成した3Dデータを3Dプリンターで印刷するためには、ファイル形式を「STL形式」に変換する必要があります。
STL形式はほとんどの3Dプリンターに対応するファイル形式です。すべての立体形状がポリゴンで構成され、ポリゴンの分割数を細かくするほど滑らかな曲面を表現できます。
なお、「OBJ形式」と呼ばれるファイル形式もありますが、STLへの変換出力が可能なソフトもあります。
3D CADではワイヤーフレーム・サーフェイス(サーフェス)・ソリッドを用いて点や線、面や体積で3Dデータを作成します。
正確なデータ作成ができるのが強みですが、3D CADでのデータ作成にはある程度の知識が必要になるというデメリットもあります。
3D CADのソフトウェアの種類としては以下が挙げられます。
3D CGでは三角形や四角形を組み合わせたポリゴンベースと、曲面を使ってプリント用のデータを作成するスプラインベースの2種類の方法を使って3Dデータを作成します。曲面が多い製品に向いているため、フィギュアなどの作成に適しています。
3D CGのソフトウェアで知られているものとして、以下の2つがあります。
3Dスキャナーや3Dプリンターのスキャナ機能で実物をスキャンしてデータを作成します。既に3Dデータ化したいモデルがある場合、3D CADなどを用いるよりスキャンした方が効率が良いことも。
「3Dプリンターのテストをしたい」「自分で3Dデータを作成する時間がない」という場合は、無料配布サイトからデータをダウンロードする方法もあります。ただし商業利用をしないことや著作権などのルールがあるため、使用の際には注意が必要です。
また、データダウンロードでは既製品しかつくれないため、つくるものにこだわりがある場合はデータを作成する必要があります。
「3Dデータを作成してオリジナルのものを作りたいけれど、3Dデータを作成する知識や時間がない」という方もいるでしょう。その場合、3Dデータ作成サービスを利用すると良いでしょう。
3Dデータ作成サービスでは、写真やイラストを渡すだけで3Dデータを作成してくれます。なお、サービス内容によっては3Dプリントまで行ってくれる場合もあります。
3Dデータを作成しSTLファイルの出力や整合性チェックをした後は、造形ツールパスデータへ変換します。使用する3Dプリンターに合った出力方式に変換できるスライスソフトを選びましょう。なお、3Dプリンターによっては専用のスライスソフトを用意していることもあります。
STL(OBJ)データにエラーがあると、3Dプリントができません。 STL(OBJ)データで起こりやすいエラーとしては、以下のようなものが挙げられます。
たとえば変換精度とはポリゴンの分割数を意味しますが、変換精度が低いと曲面をただしく表現できなかったり、形状が粗くなることも。そのため変換精度は高めの設定がおすすめですが、ファイル容量が大きくなってしまう場合は調整しましょう。
また、3D CADソフトなどで体積のないサーフェイス(サーフェス)までしかデータ作成を行っていない場合、プリントができません。そのため体積のあるソリッドまで変換してからSTL形式に保存しましょう。
そのほかには、ポリゴンに穴がある場合もプリントできません。ポリゴンに穴がないか確認し、修正してからプリントしましょう。
3Dプリントでは体積がないデータはプリントできません。体積のあるソリッドまで変換しているか確認しましょう。また、薄すぎる3Dデータは上手くプリントされないか、プリントできたとしてもサポート材除去時などに壊れてしまう可能性があります。どのくらいの厚みがあれば良いのかは使用材料や3Dプリンターによって異なるため、強度に不安がある場合はテストプリントしてみると良いでしょう。
積層方向によって造形物の仕上がりや強度が変わります。積層方向はプリントする時のパーツの向きによって異なり、「積層方向に対して垂直にかかる力に弱い」という特徴も。そのため、強度や仕上がりを考慮し、積層方向に注意してデータを作成しましょう。
複雑な形状のものをプリントする場合、サポート材の使用が必要です。しかし形状が複雑なことでサポート材の除去時に上手く除去できない・除去時に本体を壊してしまうという可能性も。そのため、複雑な形状の場合はパーツ分けしてプリントするなど、サポート材をなるべく使用しない工夫が必要です。
3Dプリントのためのデータ作成には、大きく分けて以下の方法があります。
オリジナルの造形物をプリントしたい場合はデータ作成から対応する必要がありますが、「データ作成に自信がない」「データ作成の時間がない」という場合もあるでしょう。
その場合、データ作成サービスを利用するのがおすすめです。データ作成サービスでは面倒で複雑なデータ作成から対応してくれるため、3Dプリントの知識や技術がない方でも安心して依頼できるでしょう。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。