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業務用3Dプリンターを導入すると、試作・開発段階でどのようなことが可能になるのか、まとめています。
試作・開発段階では、ここまで進めてきた計画で、設計時の仕様に合致した製品になっているか確認が重要です。性能面や強度、耐久性などに問題点がないかチェックして進める必要があります。
3Dプリンターの魅力は、複雑な形状であってもスピーディーにつくり出せる点です。サイズが合わない、構造がおかしいといった問題があった場合、すぐさま問題箇所のデータを修正することで、スムーズな対応が可能です。
思いついたアイデアをそのまま造形モデルとして具現化できる点も、3Dプリンターの大きなメリット。現場で使用するボルト1本まで再現できます。使い方もシンプルであり、CADデータを3Dプリンターに転送するだけでイメージどおりの試作品を生み出せます。
さらに社内の業務用3Dプリンターを活用することで、外注に出せば本来は1週間かかる試作品が、わずか数時間で作成可能です。外注依頼をしてから試作品が出来上がるまで、1ヶ月近くかかる物であっても、数日で出来上がるでしょう。また、試作品をいくつも作れるため、サイズや形状のバリエーションの確認が容易になるうえ、外部に機密情報が漏れてしまう心配もありません。
試作・開発段階のプレゼンテーションにも役立つでしょう。デザインを実際に見たり触れたりできるので、図面や仕様書だけのときよりも明確に伝えられます。組み付け時に起こる部品同士の相性も業務用3Dプリンターで作った部品のモデルを使って確認することで、トラブル防止につながります。
複雑で多様化しており、かつ納期が短い物であっても、3Dプリンターならば柔軟に対応できます。初期投資でコストがかかりますが、時間がかからないので最終的なコストダウンを図れるでしょう。
ただし、3Dプリンターでは実際の製品よりも耐久性が低いため、製作手法を使い分けたほうがよいです。たとえば最終段階の試作であれば、射出成形・切削加工で質の高い試作品を作る方が好まれます。
既に業務用3Dプリンターを導入している企業は、試作・開発の段階でどのように活用しているのでしょうか。
3Dプリンター導入後、画面の中だけでの想像ではなく、動きのある世界が見られた点に社内で驚きの声が上がったというリコーテクノロジーズ。よりリアルな物を確認する時間があるからこそ、品質の向上につながります。
また、仕上がりのタイミングを正確に算出できる点も、高評価を得ているそうです。試作品の評価計画を立てやすい上、ひとつの評価作業が終わってすぐ、次の評価作業へ移れることで、仕事がスムーズになったのだとか。
実際、造形物が完成するまでのスピード感は、設計者をよりクリエイティブな思考へ導くサポートをしてくれているそうです。
さらに、開発の手戻りを抑えていることも導入成功の要因。たとえ基準に満たない物だったとしても、すぐに修正できるため、造形物の精度を高めながら、色々なアイディアを試すスタッフもいるようです。
これまでは画面を見てイメージしていましたが、これからは実際に手に取って確かめる時代に変わるでしょう。商品開発の初期段階からこまめに評価すれば、どんどん質が上がります。製品の質だけではなく、組み立て工程や量産性の検討などもできるのが、3Dプリンターなのです。
全国の鉄道・交通関係企業、警備会社向け、警備・防犯・安全用品などの企画・製造・販売を行っている株式会社金星。最終製品の製造までできる3Dプリンターを導入して製品開発スピードとコストの大幅な改善を実現しました。
これまでは新製品開発の金型による試作品製作を外注していましたが、納品物の仕上りがイメージと異なる場合が多く手戻りが頻発。そのたびに金型も製作し直すので開発期間が長くなりコストがかかるという課題を抱えていました。そこで試作から最終製品の生産まで社内で行いたい、金型を作らずに開発ができないかと3Dプリンターの導入を検討し、プロトタイプ製作だけでなく最終製品の製作まで行えるHP Jet Fusion 3Dプリンターの採用を決定。
リコージャパンを選んだのは様々なメーカーの製品を取り扱っている代理店であったことに加え、3Dプリンターに関して豊富な情報量と知識があり、導入・活用に適切なアドバイスやサポートをしてもらえるからだとか。
3Dプリンター導入後、試作から最終製品まで自社で内製できるようになり、製品開発スピードが格段に上がり、金型を使わずに最終製品が自社で製造できるので、金型製作コスト、輸送コスト、組み上げコストなど1/2から1/3のコスト削減もできました。製品の耐久性を含めた最終品質検証も楽々クリアでき、模倣品が作られるリスクも減って、より独自性の高い製品開発が可能となったそうです。
参照元:RICOH 3D PRINT ONLINE(https://www.ricoh.co.jp/3dp/case/kinboshi/?utm_source=media&utm_medium=Monoist&utm_campaign=1902)
Mafrkforgedの3Dプリンターはカーボンファイバー(連続炭素繊維)3Dプリンターであり、樹脂の軽さと6061アルミニウム同等の強度を兼ね備えたパーツを製作することが可能です。そのMafrkforged3Dプリンター導入事例として、オフロード車で使うカスタム製品の設計、開発をご紹介します。
業務用3Dプリンター導入以前は、SDHQオフロード車の荷台ラック溶接中の固定に単純な鋼板を使用していたため、曲がった仮付溶接(タッキング)、曲がった溶接、人為ミス等の課題がありました。 Markforged Mark Twoによって、固定具は手作業で製造する必要がなくなり、溶接部品に合わせた効果的な固定具が製造できるようになりました。腐食にも強いため、破損しても簡単に再製造が可能です。
Markforged Mark Twoを導入することで、部品の品質を向上させただけでなく、大幅なコスト削減も実現しました。また固定具をオンデマンド製作することで、開発スピードだけでなくビジネスのペースも向上させ、そのコスト削減率は99%、時間削減率は97%にもなっているそうです。
参照元:ファクトリー・イノベーション株式会社(https://factoryinnovation.co.jp/markforged/markforged-%E6%B4%BB%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BE%8B/)
3Dプリンターを導入すれば、いくら設計スピードが早くても、ある程度整った形状の物を作りだせます。数時間で試作品が出来上がるのは、試作・開発段階において重宝されるスペックといえるでしょう。
また、緊急性の高い要求に対して柔軟に対応ができるのも特徴です。たとえば、展示会で必要な金型の量産が間に合わないときに3Dプリンターで対応できます。ある程度の強度があって高精度な物を生み出せる3Dプリンターであれば、造形物を透明にして内部を見せることも可能です。
プレゼンテーションの際に図面や仕様書だけでは不安な方でも、3Dプリンターで実物に近い物を用意するとアピールしやすくなるでしょう。紙ベースのプレゼンテーションよりも伝わりやすくなって、提案が採用される可能性が高まります。
3Dプリンターの造形物では、完成品に比べて質が高くないといったデメリットがありますが、緊急性のある場面で大いに役立ちます。動作検証や製品不良の発見にも3Dプリンターが活躍するでしょう。平面上では、部品の組み付け部分がきちんと合っているのかまでは分かりません。可動域まで含めた、入念なチェックを行えるのが3Dプリンターの強みです。
試作・開発段階での使用を前提とするなら、光造形方式の3Dプリンターが特におすすめです。業務用3Dプリンターの中でも、高精度の造形物が作成でき、産業分野で多く利用されている技術のため、信頼性も高いと言えます。
光造形方式の3Dプリンターは、エポキシ樹脂に紫外線を当てて固め、その固めた層を積み重ねることで、造形物を作り上げます。他の方式と比べて、積み重ねる層の厚みが小さいので、表面が滑らかにできるうえ、複雑な構造の物も対応できます。
アクセサリーやフィギュア、人工心臓、壁瓦など、さまざまな場面で、光造形方式の3Dプリンターによって作り出された造形物が活用されています。
また、透明度の高い素材も使えるため、内部構造を見せる設計にも対応でき、表面を研磨することでさらに透明度を上げられるため、見栄えの良さも評価されるでしょう。
ただし光造形方式は太陽光で劣化してしまうため、長時間の使用には向きません。また、素材が高価なために製造単価が高く、量産に向いているとは言い難いのが現状です。
それでも、この段階であれば光造形方式の3Dプリンターが利便性が高いでしょう。よりスペックの高い業務用3Dプリンターを求めているのであれば、ぜひ検討してみてください。
近年、製造品の多様化に伴い、3Dプリンターに求められる機能性においても、性能が重視されることがポイントとなってきています。
ここでは、500万円未満のミドルクラスでありながら、高精細、高強度、短納期で造形できる3Dプリンターをそれぞれ紹介します。各製品の特徴に加えてショールーム情報もまとめました。
製品名 | 積層ピッチ | 最大造形サイズ (W×D×H) |
造形方式 | 材料などの特徴 |
---|---|---|---|---|
アジリスタ [キーエンス] |
0.015mm~ | 297mm×210mm×200mm | インクジェット方式 |
アジリスタは、国産の3Dプリンターでは数少ないインクジェット方式を採用し、積層ピッチ0.015mmの高精細造形を実現。水溶性のサポート材の為、細部までしっかりと造形でき、部品の組付けまでできる精度を誇ります。 使用可能な材料はUV硬化アクリル樹脂とシリコーンゴム。 樹脂はアクリルに少量のウレタンを配合し、靭性を持たせているため、ネジを締めても割れないことが特徴です。 |
Mark Two [Markforged] |
0.1mm~0.2mm | 350mm×132mmx154mm | 熱溶解積層方式+ 連続フィラメント方式 |
Mark Twoは、Markforged独自のカーボンファイバー連続繊維を使用できる方式が採用されています。 これは、造形物の内部にカーボンファイバーで骨組みを組成しながら形作っていく方式です。 これにより、高強度の造形が可能になり、製造工程で使う治具や工具、より強度が求められる部品の製造を行うことができます。 |
G-ZERO [グーデンベルグ] |
0.05〜0.250mm | 250mmx210mmx200mm | 熱溶解積層方式 |
G-ZEROは、最大500mm/sというスピーディな造形ができます。 短時間で造形が可能になり、生産性が向上します。 高速で動くヘッドの振動を抑える技術も搭載し、ハイスピードながら安定感のある造形ができます。 |
■選定条件
アジリスタ[キーエンス]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高精細」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、インクジェット方式を採用し、積層ピッチが最小の製品として選出
Mark Two[Markforged]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 強度」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、カーボン素材を使用できるもので、唯一、熱溶解積層方式+連続フィラメント方式を採用している製品として選出
G-ZERO[グーテンベルク]……2023年7月19日、Googleで「3Dプリンター 高速」と検索して表示された50万円以上500万円未満の製品のうち、造形速度が最速の製品として選出しました。