公開日:|更新日:
CONTENT
その8.指向性エネルギー堆積法(DED)
用途別3Dプリンター3選を
詳しく見る
この記事でわかること
- 指向性エネルギー堆積法の仕組みと、LENS・MPA・WAAMといった代表的な3つの種類
- 高速かつ大型造形が可能で異種金属も組み合わせられるメリットと、表面が粗くなりやすいデメリット
- レーザークラッディングによる金型補修での活用と、複合加工機への搭載が進む現状
積層造形法の一つ、指向性エネルギー堆積法について紹介。メリットやデメリットなどをまとめています。
指向性エネルギー堆積法とは
指向性エネルギー堆積法(Directed Energy Deposition)は、粉末やフィラメント状の金属をノズルから噴射し、主にレーザーや電子ビームなどで溶融し積層することで造形していく方式です。
指向性エネルギー堆積法の種類
指向性エネルギー堆積法は、素材や指向性エネルギーの種類によって3つに分類されます。
LENS
指向性エネルギー堆積法の中でレーザーを用いた造形法をLENS(Laser Engineering Net Shape)といい、「レーザー直接堆積法」とも呼ばれています。
レーザーを用いた金属3Dプリンターの造形方式として粉末焼結方式(SLS/SLM)がありますが、粉末焼結方式は溶融プールをあらかじめ粉末材料で満たしておく必要があるのに対し、LENSはノズルから材料を噴射しながらレーザーで焼結して造形するため、材料費を低減できるという特徴がある他、噴射する金属の切り換えによって異種金属を組み合わせることも可能となっています。
MPA
MPA(Metal Powder Application)は、LENSと同様にノズルから材料を噴射して造形していきますが、レーザーなどの熱源を用いずに音速の3倍程度という圧縮加熱空気によって金属粉末を噴射し、金属粒子を結合させて堆積していく比較的新しい造形方式です。
熱源を用いないことから、LENSでは使用できない金属材料にも適用することや、形状によっては既存の金属3Dプリンターよりも早く造形できるといったメリットがあります。
WAAM
ワイヤー状の金属をアーク放電によって溶融し造形する方式をWAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)といいます。
ワイヤーは粉末材料よりも安価で且つより幅広いデザインにも対応できるとされていますが、一方で表面に凹凸が出てしまうなど、造形の精度としてはそこまで高いとはいえないようです。
指向性エネルギー堆積法のメリット
耐久性の高い造形ができる
様々な金属を素材として使用できるため、耐久性の高い造形物ができます。
造形速度が速い
形状によりますが、造形速度はパウダーベッド方式の約10倍程度といわれています。
異種金属を組み合わせた造形ができる
金属粉末を混合するのではなくそれぞれを切り換えて積層することで、異なる材料を組み合わせた金属の造形が可能となります。
大型造形物の造形も可能
X・Y・Z軸の長さを変えるだけで大型の造形物まで対応でき、且つまたバーチカルテーブルを使うことで効率良く高速で造形が可能です。
指向性エネルギー堆積法のデメリット
表面の仕上がりが多少粗い
一筆書きの様に造形するため積層痕が残りやすい点や、パウダーの除去作業がないため、表面の仕上がりが少し粗いとされています。
造形形状の制約が大きい
再現性・寸法精度などはパウダーベッド方式の方が優れており、造形形状の制約も大きいといえます。さらに、使用する材料や金属を結合させる手段によって造形物の精度にも影響します。
金属劣化が発生する
チタンなどの活性金属の場合、溶融・凝固の過程で酸化による金属劣化が発生する可能性があります。
指向性エネルギー堆積法に対応する造形材料
指向性エネルギー堆積法は、ニッケル合金・ステンレス鋼・コバルト合金・チタンなど、様々な素材に対応しています。
なお、上述のように指向性エネルギーの種類によって粉末・フィラメント・ワイヤーなど、用いられる材料が異なります。
レーザークラッディングによる補修が可能
指向性エネルギー堆積法は、金属部品の摩耗箇所に対して肉盛り補修を行なう「レーザークラッディング」という技法が使えます。
さらにより耐摩耗性に優れた素材を金属の表面にコーティングするといったことも可能であり、金型や部品などの補修への活用も期待されています。
指向性エネルギー堆積法の代表的な3Dプリンター
パウダーベッド方式などと同様に金属3Dプリンターとして多く採用されており、国内外問わず多くのメーカーから指向性エネルギー堆積法の3Dプリンターがリリースされています。
MU-5000V LASER EX[オークマ]
切削・研削・金属積層造形・レーザー焼入れといった金属加工の工程を集約した複合加工機。高出力安定レーザーによるムラ・ひずみの少ない部分焼入れが可能。精密積層造形によるメッシュ加工、樹脂金型の補修加工、複数のコーティング材の切り換えなどが可能です。
まとめ
複合加工機の機能の一つという位置付けが多い
指向性エネルギー堆積法は、金属素材による耐久性の高い造形物ができる、大形造形物に適しているといった特徴がある一方、パウダーベッド方式に比べて表面の仕上がりや再現性は劣るとされており、現状、指向性エネルギー堆積法の金属3Dプリンターは複合加工機の機能の一つという位置付けとして販売されている場合が多いといえます。
よくある質問
Q1
指向性エネルギー堆積法(DED)は複雑な内部流路を持つ部品にも向いていますか?
A
指向性エネルギー堆積法(DED)は粉末やワイヤを熱源へ供給し、基材へ材料を重ねる方式です。既存部品の一部補修や大型部品の肉盛りには活用できますが、熱源と材料を当てられない閉じた内部流路を一体で作る用途には制約があります。流路を作りたい場合は、分割して接合する設計や別の造形方式も比較します。
まず流路の寸法と開口部、必要な材料・検査方法を図面で示し、造形だけでなく内部を清掃・検査できるか確認してください。
Q2
指向性エネルギー堆積法(DED)の種類を比較するとき、何を基準に分けますか?
A
供給材が粉末かワイヤか、熱源がレーザーかアークかなどで分けて比較します。ワイヤ方式は材料の扱いと供給効率、粉末方式は狙った場所への投入のしやすさなどを比較します。単純な優劣ではなく形状と用途で決めます。材料使用率、造形速度、熱影響、狙える精度、必要設備が変わります。
方式の略称だけで選ばず、対象部品の材質とサイズ、補修か新規製造かを先に決めてください。
Q3
指向性エネルギー堆積法(DED)なら、大型部品を粉末焼結方式より早く作れますか?
A
大型部品の肉盛りや一部補修では有利な場合がありますが、造形速度を一律に比較することはできません。造形だけが早くても、重要面の切削や熱処理が長ければ納期は短くなりません。完成までの工程で比べます。形状、材料、必要な精度、後加工の量が影響します。完成までの時間を、造形・熱処理・切削・検査に分けて見積もり、代替工法と比べると判断できます。
Q4
金型の摩耗部分を指向性エネルギー堆積法(DED)で補修するとき、何を確認しますか?
A
母材と肉盛り材の組み合わせ、熱影響、補修後の寸法と硬さを確認します。摩耗部を肉盛りした境界で剥離や割れが起きないか、母材側も含めた検査が必要です。仕上げ後の形状だけで採用を決めません。単に材料を足すだけでは金型として使える状態にならず、切削や研磨、必要な検査が伴います。摩耗範囲を測定し、補修後に必要な表面精度と寿命を決めて試すとよいでしょう。
Q5
指向性エネルギー堆積法(DED)部品の表面と寸法が不足する場合、どう仕上げますか?
A
指向性エネルギー堆積法(DED)の造形面は後加工を前提とする場合があります。加工代が少なすぎると狙った公差に仕上げられず、多すぎると切削工数が増えます。補修範囲ごとに適量を決めます。重要な合わせ面や穴には切削・研削の加工代を設け、造形後に仕上げます。最初に完成寸法と許容差を決め、造形データに加工代を反映しておくと、後工程で削り過ぎるリスクを減らせます。
Q6
指向性エネルギー堆積法(DED)を導入する際、安全面と製造工程で何を見ますか?
A
材料の種類に応じた粉末・ワイヤの取り扱い、熱源の安全対策、換気、部品固定、熱処理や検査の設備を確認します。粉末を扱う構成とワイヤを扱う構成では設備の安全条件が違います。候補装置の工程を基に設置計画を作ります。切削機と組み合わせた装置もありますが、構成は機種ごとに異なります。
対象部品を完成させる全工程を洗い出し、社内で担う作業と外部に出す作業を決めてください。