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製造メーカーでは3Dプリンターがどのように活用されているのかを紹介します。
引用元:iGUAZU(イグアス)公式HP
<http://www.iguazu-3d.jp/case_study/partmanufacturing/>
ものづくりの世界を変える存在になったと言われている3Dプリンターは、現在さまざまな業界で活躍しています。身近な存在になっていくであろう3Dプリンターはこれからどのように活用されていくのでしょうか。そのなかでも製造業において3Dプリンターの存在意義は高く、積層技術の進化によって製造業の流れさえ変わってきました。
たとえば、今までは3Dプリンターの活用例として、「これからは金型が必要ない」というメリットが紹介されるケースが多々見られたでしょう。しかし、最近では金型そのものを3Dプリンターで製作する事例も出てきました。金型を3Dプリンターで製作するメリットとして、わざわざ金属の型を削り出すのと比べると、コストは約1/6に削減が可能であり、時間も大きさによりますが2~5時間程度しかかからないのが魅力です。また、工場に使用される治具についても、3Dプリンターで製作される事例が増加傾向にあります。ラインで使われる治具は、ラインの変更及び開発スケジュールなどによる短納期が求められるため、低コストかつ短期間での製造が可能な3Dプリンターが活躍しやすい条件と言えるでしょう。では、具体的にどのような使い方がされているのか、導入事例を紹介します。
新型コロナウイルスが世界的な流行を見せる中、日本においてもマスク不足が社会問題に発展していました。そんなマスク不足を、3Dプリンターで補う試みが2020年3月に発表されました。3Dプリンターの販売を行う株式会社イグアスが、3Dプリンターによって作られた「3Dマスク」を発表。
3Dプリンターでマスクの形状を造形したうえで、内側に布・ガーゼを挟み使用するようになっています。性能自体も申し分なく、フィット感のあるマスクになっているのが特徴です。イグアスはマスクの設計データを無料公開しており、3Dマスクの普及に努めています。
2017年6月、フランスの大手ソフトウェア企業が、メーカーと3Dプリンター事業者の橋渡し事業を開始すると発表。メーカーが欲しい製品や部品の設計情報をオンライン経由で発注することで、材料やコストなどの条件に合う3Dプリンティング企業と結びつけてもらえるそうです。日本での事業拡大も計画されており、国内の製造業のデジタル化がさらに加速することが期待されます。
オンライン経由での3Dプリンターによる製品の受発注は世界中で広まっており、ドイツでは受注した翌日に製品を届けるサービスを実施しているとのこと。3Dプリンターの誕生で、オンラインにさえ繋いでいれば何でも受発注できる時代が到来しつつあり、今後の展開から目が離せません。
こちらも2017年6月、大阪府にある繊維メーカーの「ユニチカ」は、3Dプリンターで造形した後でも、低温熱を利用することで形状を変えられる素材を発表しました。繊維メーカーとしての強みを活かし、独自の特殊ポリエステル樹脂を使用しているとのこと。
「3Dプリンター用感温性フィラメント」という名称で、人肌やお風呂のお湯程度の温度で軟化し、自由に形状を変えられるという、従来の素材にはない特徴を持っています。冷やすことで形状保持ができ、高温で処理すれば硬化されるので熱変形の心配はなくなるそうです。フィギュアやホビー関連製品の可動関節部や工事用治具への応用が期待されています。
現在はまだ試行中の段階ですが、積極的に改良を進めていき、2017年度中の販売を目指しているとのこと。私たちの目に触れる日も、遠い未来ではなさそうです。
参考[2]:ユニチカ ニュースリリース 繊維事業(2017/6/ 5)
フランスの大手ソフトウェア企業が、2017年、自動車・航空機の開発・製造に用いられるCADソフトに、複雑な形状の部品を軽量化しながら設計できる機能を追加しました。
これにより、3Dプリンターで航空機の金属部品を設計できるようになりました。また、コンピューター利用解析を用いて理論的に適した形状を導き出せる「トポロジー最適化」も実現しています。
トポロジー最適化では、まず変更できない条件を決めていくのがポイントです。たとえば、エンジンなどを固定するための配管「フランジ」ではボルト穴の位置から決定します。その後、変更可能な部品の形状を最適化するように設定していきます。こうすることで、部品の強度を保ちながら不要な部位を落とす設計が可能。複雑な形状を自動算出してからは、従来よりも約60%軽量化できた事例もあります。
しかし現在の国内3Dプリンターでは、トポロジー最適化による造形がまだまだむずかしいとされています。条件設定の見直しなどにより、切削加工処理への実現化を、このソフトウェア企業は目指しているようです。3Dプリンターの技術的な課題を解決していくために、機械メーカーなどと今後も連携を深めていくようです。
2007年頃、あるベンチャー企業が燃費効率の良い新型エンジンの開発に着手しました。
そのエンジンとは、内部の通路が1つしかない航空機向けのものです。規模が大きくて収益も期待できる半面、燃料消費量と排気ガス量を大幅に削減する必要がありました。
そこで効率的な燃料ノズル設計の見直しを図ったところ、3Dプリンターで製造できることが判明。ついには900点もあるエンジンの部品を、たった16点に減らせました。さらに、従来品よりも40%軽くて60%安く仕上がった事例も出ています。
参考[4]:日刊工業新聞 ニュースイッチ(2017/05/06)
国立研究開発法人である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2018年5月に日本企業が大型鋳造用砂型プリンターを発売したと発表。
製造速度は毎時10万立方センチメートルと従来の製品に比べて速度が10倍も早くなっています。これはプリントヘッドの高速化、双方向化などによって実現されました。また、従来時間がかかっていた造形後の乾燥・硬化を乾式砂・1液式を採用したことで、造形後の作業時間が2分の1に。
バインダージェット方式という、金属粉末をフラットベッドに載せてから接着剤(バインダー)で固める方法を使用しており、より複雑な形状の部品を作り上げられます。
今まで砂型のプリンターは、メリットはあったものの大量生産には向いていないと言われてきました。しかし、発表された3Dプリンターは従来の3Dプリンター製品と比べて約10倍の大きさである1800×1000×750にも対応。速いうえに製造できるサイズが大きいため、大量生産に使用できるのです。今後の産業機器や自動車製造の生産向上に期待できます。
参考[5]:fabcross for エンジニア(2018/05/08)
テキサスの建設会社がVulcanというプリンターをつかって、55平方メートルほどの3Dプリント住宅を24時間で建設したと話題になっています。建設会社によると、テキサス州オースティン市が建築許可書を出したはじめての3Dプリント住宅とのこと。
住宅はセメントを材料に3Dプリントしており簡素な造りのため、たったの44万円ほどで建築。材料も時間もかからない3Dプリント住宅は、10億人ほど存在すると言われる家を持てない人たちのために建設される予定です。
建設会社は約9億9千万円の資金調達にも成功しており、アメリカの大手ハウスメーカーからも支援を受けています。これからさらに深刻になる住宅不足を解決するために、アメリカのハウスメーカーが関心を持っているのでしょう。
双日は鋳造業者や東北大と組み、2017年11月に金属3Dプリンターを使った部品製造会社「日本積層造形」を設立しました。製品の設計から製造までを一手に担い、鋳造では難しかった複雑な形状の商品を作成します。
「日本積層造形」では、チタンアルミニウムやタングステンなど、鋳造が難しかった素材を独自技術で粉末状に加工し、製品の原料にすることが特徴です。この技術を使うことで自動車や航空機向けに、より硬く、軽い製品の生産ができるようになります。さらに、従来の金属の削りだし加工よりも、素材の廃棄量を抑えられるという利点もあり地球にやさしい製造方法であることも特徴です。
ストラタシス・ジャパンは2017年12月4日に、ボクセル単位での制御が可能な「Stratasys J750」向けソフトウェア「GrabCAD Voxel Print」を発表しました。
Stratasys J750はフルカラーかつ、マルチマテリアル対応の3Dプリンターです。36万色以上のバリエーションが表現でき、硬質や軟質、不透明なものから透明なものまで、幅広い材料を使用できます。細かい色彩の指定も可能です。こちらの商品では、素材の種類や密度、構造、カラーマッピングをスライスごとかつボクセル単位で適用できるため、従来の3D造形になく繊細で細かなデザインが可能になっています。
その他にも多彩な色彩を表現できる3Dプリンターが続々と発売されています。株式会社ミマキエンジニアリングでは、2017年11月から1,000万色以上のフルカラー造形を実現するUV硬化インクジェット方式3Dプリンター『3DUJ-553』を販売開始しました。
3Dプリンター市場は、製造業を中心に教育、建築、医療といった分野へと広がりを見せています。ヨーロッパやアメリカで拡大を見せており、ますますの市場拡大が予想されています。『3DUJ-553』は、1,000万色以上のフルカラー造形を実現しました。造形には、UV光を照射することによって硬化するUV硬化インクを使用しています。ディテールまで再現できる精巧さによってさらに美しい造形へと導きます。今まで平面で表現していた看板など、立体的な造形にすることによって視認性を上げ、他社との差別化も図れます。
機械商社のアルテックは2017年11月、米Desktop Metalと代理店契約を締結し、金属3Dプリンター「Studioシステム」と専用の後処理装置、デバインダーステーション(デバインダーステーションは、プリンターから取り出したモデルからバインダーを洗い流す装置)、焼結炉の国内販売を開始しています。製造を一貫してできるため、初期投資の経費削減できます。従来工法では造形が難しかった、複雑な形状のモデルも造形可能になっています。専用ルームや特別な外部換気装置が不要なので、オフィス環境でも利用が可能です。
航空機エンジンの製造を行っているGEでは、ジェットエンジンに使われる燃料ノズルを3Dプリンターで製造。従来は20種類の部品を組み合わせて使っているノズルですが、3Dプリンターの使用により1個のユニットで完成できます。部品を組み合わせることがないのでその分軽くなるのも、3Dプリンター製造のメリット。既に自社で作るパーツのうち10%は3Dプリンター製造ですが、ジェットエンジンの燃料ノズルを3Dプリンターで製造することで、さらに大幅なコスト減が計算されています。
ドイツの製造メーカーが、製造工程の一部に3Dプリンターを取り入れることで試作品製作のコストを97%カットすることに成功。従来、射出成型で造られるサンプル品製造に、8週間という時間と4万ユーロという膨大な金額を費やしていましたが、射出成型の金型を3Dプリンターで製造することで、設計から出力まで3~4日、1,000ユーロほどで済むようになりました。大幅な時間とコストのカットはもちろん、製造工程において多大な効率化をもたらしています。
国内でルアーを製造する株式会社ジャッカルでは、これまでルアーの試作品を切削機で作っていたものを、より素早く効率的に行いたいという考えから、3Dプリンターの導入を決めました。導入前の課題は、手作業により数に限りがあること、1つの試作品に時間がかかるうえ材料コストが高いことでした。ですが3Dプリンターの導入で、1つの試作品の製作時間を最大83%も削減でき、材料の効率的な利用も可能に。ほぼ成型品とも言える仕上がりも満足しています。
3Dプリンターを活用した新しいサービスも生まれています。それは、まだおなかの中にいる赤ちゃんの3Dの造形を作成するサービスです。丸紅情報システムズ(MSYS)が2017年10月から、妊婦のおなかの中の赤ちゃんを、3Dプリンターで再現するサービスを始めました。産婦人科医と連携ながら、出産のお祝いや記念に活用してもらうことが狙いです。再現する時には、おなかの中の赤ちゃんを超音波で検査する「4Dエコー」の立体的な画像を使用します。3Dプリンターを使って、2~3週間でアクリル系樹脂製の置物が完成します。表現するあかちゃんの仕草などは、医師や家族と相談しながら決めることが可能です。妊婦の間では、おなかの中の赤ちゃんの立体的な画像を見たいというニーズ多くあり、今後広く活用されていきそうです。
3Dプリンターは、実物大の立体的な臓器モデルを制作できます。CTやMRIなどのデータをもとに、その積層は14ミクロンと微細で、毛細血管や微小な病変までリアルに再現できます。3Dプリンターを活用すると低コストで多くのことを表現することが可能です。具体的には、透明の樹脂で造形された臓器モデルを用いて動脈を赤、静脈を青、神経をピンク、病巣を黄といったように鮮やかに色分けすることもできます。さらに、硬質、軟質、ゴム状といった異なる素材を用い、骨や軟骨、臓器、血管、病巣などをそれぞれ実際に近い質感で再現することもできます。造形物を使って、手術計画、研修医の教育、手術器具や装具の制作などに幅広く応用が進んでいます。医師のみならず、患者と家族にモデルを示すことで、手術方法の具体的な説明にも役立ちます。
また、3Dプリンターは研修医のトレーニングにも用いられています。さらに3Dプリンターを用いて執刀医が使いやすい手術器具、患者ごとに異なる手足の形状や好みに応じた装具の制作も可能になっています。3Dプリンターの技術は医療のさまざまな分野において、病態に応じたオーダーメイドの治療にとって大きな貢献が期待されます。
デジタル造形技術を活用した商品の製造や販売を行うMonovationは2017年4月23日、オーダーメイド製品のオンランショップ「MonoSalon(モノサロン)」の本格リリースを発表しました。3月からはフルオーダーの機能が追加されたことで、ますます多様なオーダーメイド製品への対応が可能になっていきます。
例えば、オーダーメイドのテーブルライトでは、写真の色彩の濃淡やでこぼこまで3Dプリンターで再現できます。このサービスにより、法人のみならず、個人へ3Dプリンターや製品が広がっていくでしょう。
製造業における3Dプリンター活用は広く認知され始め、3Dプリンターを利用したさまざまな取り組みが始まっています。単なる試作品の造形だけでなく、それ以外でも使用用途が広がり、実用品としての最終製造にも使われるようになりました。製造における時間の削減、コストの削減に大きく貢献してくれるため、今後ますます3Dプリンターでのパーツや製品作りが盛んになることでしょう。